ほるぷ名著復刻児童文学館シリーズ
名著複刻 日本児童文学館
第二集 32
動物詩集
室生犀星 著
裝釘・挿畫 恩地孝四郎
昭和51年4月発行(昭和18年9月初版)
日本絵雑誌社刊
ほるぷ出版

室生 犀星(むろう さいせい)…「犀星」は
ペンネーム
石川県金沢市生まれ…明治22年(1889年)〜昭和37年(1962年)
大正から昭和にかけて活躍した、日本文学を代表する詩人・小説家です。

春・夏・秋・冬と、季節ごとに詩が分けられています。犬・猫・馬・熊…そして、蚊とんぼ・雀・かに・おにやんま・ほたる・啄木鳥(きつつき)・いなご・氷魚・からす…など、春の詩15篇、夏の詩27篇、秋の詩11篇、冬の詩19篇(動物の詩の他に、季節ごとの各扉のページに“春の顔・夏の顔・秋の顔・冬の顔”といった詩が1篇づつあります)合わせて72篇の詩が収録されています。


  序 詩

生きものの

いのちをとらば

生きものはかなしかるらん。

生きものをかなしがらすな。

生きもののいのちをとるな。


  うじのうた

うじでも
生きてゐるんだ。
のびたりちぢんだり
あつちを見 こつちを見
春はあつたかいから
うじも
生まれてこなければならないんだ。
こはいものがゐたら
よこ道をとほります。
さむいかぜがふいたらまはれ右だ。
あつちこつちに花が咲いて、
じつとしてゐられない
白いうつくしいうじの ねえやさん。


  毛虫のうた

毛虫のせなかに
いろいろな色彩(いろ)がある。
朱、赤、黄色い玉、
紫、ねずみいろに青と紺、
それが美しいもやうをつくり、
緋威鎧(ひ おどし よろひ)のやうに
きちんとそめられてゐます。
誰もつくつたわけではないが、
しぜんにそめられてゐるのです。
いやらしいと思ふより
じつと見てごらんなさい、
あんな美くしいものが
人間につくられるかどうか、
よく
眼をつけて見てごらんなさい。


  頬白と目白のうた

頬白(ほほじろ)はほほがまつ白で、
目白(めじろ)は目のふちが白く
大きさもおなじくらゐで
どちらも白の姉妹、
ちちがとんでそまつたやうな白、
白。
けふは山では金色のやうなお天氣です。
白の
二窒フ姉妹が
くちばしでなかよく
くるみの實をつついて話してゐる。
毎年秋になるとあへるわね。
秋になるとどこにもよらずに
すぐこの山に來てしまふ。
この山にあなたがゐるんだもの。


  うさぎのうた

冬になると
うさぎの毛が白くなる、
野も山もまつ白になる
雪でまつ白になる。
雪がふるとうさぎはうれしくなる、
じつとして、
ゐられなくなる、
とび出したくなる、
うさぎは大きな耳をひらいて
まい日 雪をよんでゐる、
遠い山の雪をよぶのだ。

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